ボイストレーナー養成講座
〜感覚の指導から、再現できる指導へ〜
◆ はじめに
「お腹を使ってー」
「頭から声を出してー」
「喉を開いてー」
ボイストレーニングの現場では、よく聞くフレーズですよね。
私も、そんな感覚的な表現でレッスンを受けた経験があります。
先生の声を真似したり、感覚を頼りに練習することでも、声の変化は確かに生まれます。
でも——
指導を続ける中で、こんなふうに感じたことはありませんか?
「もっと具体的に伝えたい」
「もっとわかりやすく、生徒が再現できる形で教えたい」
この記事では、私自身の経験をもとに、「言語化できるボイストレーナー」を目指す方へ、学びと気づきのきっかけをお届けします。
◆ 筋肉のこと、説明できますか?
私がボイストレーナーとして指導を始めたのは2009年。
当時の私は、正直、発声の仕組みについて深く理解していませんでした。
それでも一生懸命、習ったことを伝えていたつもりでした。
そんなある日、生徒さんから言われた一言が忘れられません。
「筋肉のこと、教えてもらえますか?」
……答えられなかったんです。
筋肉について学んだことがなかった私は、うまく説明ができず、
その生徒さんはやがてレッスンを離れていきました。
とても悔しかった。でも、それが大きな転機となりました。
◆ 学び直しの日々
それから私は、ボイストレーニングに関する専門書を読みあさり、
東京の人気トレーナーの講座にも数多く参加しました。
最初は、読んでも意味がわからない。
専門用語ばかりで、ただページをめくるだけの日もありました。
それでも、「伝えられる指導者になりたい」という想いで、学び続けました。
すると少しずつ、発声の仕組みが立体的に見えてくるようになりました。
◆ 感覚だけの指導では足りないこと
指導をしていると、よくあるのが次のようなケースです。
- 喉の緊張(締まり)を放置してしまう
- 息漏れのある発声を改善しないまま続ける
どちらも、一時的には“なんとなく歌える”ことがあっても、
中長期的には声の不調や発声のクセを悪化させる原因になります。
● 喉の締めを放置すると
喉に過剰な力が入った状態では、高音をのびのびと出すことが難しくなります。
その状態が続けば、発声時にストレスを感じたり、
「歌うのがしんどい」と感じるようになってしまいます。
● 息漏れが続くと…
息漏れは、声帯がしっかり閉じないまま声を出す状態です。
この発声が続くと、声帯への負担が増し、疲労や乾燥が起きやすくなります。
結果として、声がかすれる、枯れる、といったトラブルにつながることもあります。
◆ 声を守る指導者へ
生徒さんが気持ちよく、長く、楽しく声を出し続けるためには、
こうしたリスクをできるだけ早く見つけ、サポートしてあげることが大切です。
声は、生徒さんの人生そのもの。
その声を守ることが、指導者としての私たちの使命だと思っています。
私の教室では、生徒さんの継続率がとても高いです。
長いお付き合いの中で信頼関係が育まれ、
ときに人生のパートナーのような存在になることもあります。
◆ 言語化できるボイストレーナーという在り方
「どうしてできないのか」
「どのようにすれば改善できるのか」
「生徒さんは今、どう感じているのか」
それらを言葉で丁寧に伝えられるトレーナーは、生徒さんにとって大きな安心になります。
感覚的な指導にプラスして、「言語化できる力」を育てていくことで、
あなた自身の指導の幅も、さらに広がっていくはずです。
◆ おわりに
「伝わる指導」を目指すすべてのボイストレーナーへ。
発声の仕組みと向き合い、生徒の声と人生に寄り添う——
そんなあなたの挑戦を、私は心から応援しています。
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